骨粗しょう症外来

当院では、骨粗しょう症の治療と検査・予防を目的とした外来診療を行っております。
専門的な治療や適切な生活改善を行うことで骨密度の減少を改善し、骨折リスクを大幅に減少させることができますので、
骨粗しょう症でお悩みの方、予防されたい方は、お気軽にご相談ください。

骨粗しょう症

骨粗しょう症とは

骨粗しょう症は、老化やカルシウム不足、運動不足、喫煙や飲酒、閉経による女性ホルモンの減少などが原因となり、骨量(カルシウムやコラーゲンなど)が減少し、骨がスカスカになり、脆くなる疾患です。
近年では、偏食や極端なダイエットなどによる若い女性の骨粗しょう症も問題視されるようになっています。

骨粗しょう症になることで、背骨が体の重みで潰れたり、背中や腰が曲がったり・痛んだり、変形による圧迫骨折が起こったり、ちょっとした転倒で骨折するといった事態を招きやすくなります。
なかでも大腿骨近位部(足の付け根の骨)を骨折すると、体を支える機能が損なわれてしまい、「要介護状態」を招きやすいため、注意が必要です。

女性は50歳になる前に検査を

一般的に骨量は20~30歳頃の若い時期をピークに、加齢と共に減少していきます。特に閉経を迎える50歳前後の方は注意が必要で、閉経による女性ホルモン(エストロゲン)の分泌低下は、新たに骨を作ることよりも骨が溶けるスピードが上回る状況をもたらします。そのため、50歳になる前に一度は、骨粗しょう症の検査をお勧めしています。

骨粗しょう症の検査

当院では、骨密度検査、骨代謝マーカーの検査、X線検査、身長測定などを用いた検査を行います。
検査結果により、運動療法や薬物療法などの治療を始めるべきか否かの判断や骨折のリスクを判断いたします。

骨密度検査

骨の強さを判定する際の重要な尺度の1つに「骨密度」があります。この骨密度を測定(DXA法)するため、当院では全身型の骨密度測定装置を導入しております。骨粗しょう症のリスクが高いと判断された方は、4ヶ月に1度、腰椎(腰骨)・大腿骨頸部(太ももの付け根部分の骨)などの骨密度検査をお勧めしております。

骨代謝マーカーの検査

骨吸収と骨形成のバランスが崩れると骨は弱くなるため、血液や尿によって「骨代謝マーカー」を調べることで骨折のリスクなどが判断できます。骨吸収を示す骨代謝マーカーの高い人では、骨密度の低下する速度が速いため、骨密度の値にかかわらず、骨折リスクが高くなります。

X線検査

胸椎や腰椎のX線写真を撮影し、骨粗しょう症と他疾患との鑑別を行う検査です。骨折や変形の確認のほか、骨がスカスカになっていないかどうかを検査します。

身長測定

25歳時点の身長と比べて、どのくらい縮んでいるかを調べます。25歳の頃より4cm以上低くなっている場合は、それほど低くなっていない人と比べ、骨折リスクが2倍以上高いという報告もあります。

DXA(デキサ)法とは

DXA法(二重エネルギーX線吸収測定法)は、高低2種類のX線を主に腰椎、大腿骨頸部などに照射して、その透過度をコンピュータで解析し、骨量を単位面積で割った値を「骨密度」として算出します。検査時間は短時間で、誤差が小さく、放射線の被爆量も少ないので、安全性に優れるというメリットがあります。

DXA法は現在、骨量測定における標準的な検査法として重視され、骨粗しょう症の精密検査や治療の経過観察、また骨折リスクの予測において非常に有用とされています。『骨粗しょう症の予防と治療ガイドライン』(骨粗しょう症の予防と治療ガイドライン作成委員会)でも、DXA法を用いた計測が推奨されています。

DXA法で使用する検査機

骨粗しょう症の予防と治療

骨粗しょう症は「骨の生活習慣病」とも言え、その発症には、老化や閉経以外にも
食事・運動などの生活習慣が大きく関与しています。
そのため、食事・運動療法も予防と改善には不可欠な要素です。

食事療法

食事療法

粗しょう症の治療や予防に必要な栄養素は、骨の主成分であるカルシウムやたんぱく質のほか、および骨のリモデリング*に必要なビタミンD・Kなどです。これらの栄養素を積極的に摂りながら、しかもバランスのとれた食生活を送ることが大切です。

骨粗しょう症の人が避けるべき食品は特にありませんが、過度のアルコール摂取は、カルシウムの吸収を妨げ、尿からのカルシウムの排泄量を増やすほか、カフェインを摂り過ぎは、血液中のカルシウムとリンのバランスを保とうとして骨の中のカルシウムが血液中に放出されます。骨密度の減少を抑えるためにも、アルコールやカフェイン、リン(スナック菓子やインスタント食品)などの摂り過ぎには注意しましょう。

リモデリング:骨を壊す働きをする破骨細胞が骨を吸収する一方で、骨をつくる働きをする骨芽細胞が、破骨細胞によって吸収された部分に新しい骨をつくる代謝作用。

積極的に摂りたい栄養素を多く含む食品

カルシウム 牛乳、乳製品、干しえび、しらす、ひじき、わかさぎ、いわし、ししゃも、大豆製品、えんどう豆、小松菜、モロヘイヤ など
たんぱく質 肉類、魚類、卵、乳製品、大豆製品 など
ビタミンD あんこうの肝、しらす干し、いわしの丸干し、すじこ、鮭、さんま、かれい、うなぎ、煮干し、干し椎茸、きくらげ など
ビタミンK 納豆、抹茶、ブロッコリー、きゃべつ、サニーレタス、モロヘイヤ、しゅんぎく、おかひじき、小松菜、ほうれん草、菜の花、かいわれ大根、にら など

※ カルシウムは食品として700~800mg/日、ビタミンDは400~800IU/日、ビタミンKは250~300μg/日を摂取することが推奨されています。

薬物療法

薬物療法

骨粗しょう症との診断を受けたなら、治療の中心は薬物療法となります。
病状が進んだケースでは、食事療法や運動療法に併せて薬物療法を開始します。

主な骨粗しょう症の治療薬

骨をつくる薬

副甲状腺ホルモン製剤(PTH) 骨形成を促進して骨量を増やし、骨折を減少させる薬です。
専用キットを用いて1日1回自己注射する薬と、週1回医療機関で注射する薬の2種類があります。
骨密度が著しく減少しているケースなど、骨折リスクの高い患者様に用いられます。

骨の破壊を抑制する薬

ビスフォスフォネート製剤 骨吸収を抑えることによって骨形成を促進し、骨密度を増やします。特に有効性の高い治療薬として知られ、現在、骨粗しょう症治療の第一選択薬です。
ビスフォスフォネートは腸で吸収され、すぐに骨へと届きます。
そして破骨細胞に作用し、過剰な骨吸収を抑制するのです。すると骨形成が追いついて、密度の高い骨ができてきます。
選択的エストロゲン
受容体作動薬
(SERM)
骨に対しては、女性ホルモンのエストロゲンに似た作用があり、骨が壊れるのを抑制し、骨量を増加させます。
ヒト型抗RANKL
モノクローナル抗体製剤
(デノスマブ)
骨を壊す細胞をできにくくして、骨の破壊を抑えます。
すると骨量が増え、骨折リスクが減少します。
この薬の特徴は、6ヶ月に1回の皮下注射で済む点です。

骨の材料を補う薬

カルシウム製剤 食事によるカルシウムの摂取不足、乳糖不耐症の方、胃腸の手術後などに用いられます。
多くは、他剤と併用されます。
活性型ビタミンD3製剤 活性型ビタミンD3には、腸管からのカルシウムの吸収を促進して体内のカルシウム量を増やす作用があります。
また、骨形成も促します。
ビタミンK製剤 ビタミンKは骨芽細胞に作用することで骨形成を促進し、同時に骨吸収を抑制することで骨代謝のバランスを整え、骨の質を改善します。
※ワーファリン(血液を固まりにくくする薬)を服用している方には使えません。
運動療法

運動療法

骨は運動をして体重負荷を掛けることによって増加し、強化されます。
さらに筋肉を鍛えることで体をしっかりと支えられるようになり、バランス感覚も向上して転倒防止にもつながります。

骨量を増やすには、強度の高い運動をする必要は無く、ウォーキングのような軽めの運動でも十分に効果がありますから、とにかく長く継続してください。